イナキの歴史そして未来へHISTORY & FUTURE

ゴムノイナキ、次の100年に向けて
将来のビジョン

EPISODE 3

自動車業界では、100年に一度といわれているパラダイムシフトが起こるなか、現在自動車部品中心のゴムノイナキが、どうやって次の100年を生き残っていくか。 そして、技術開発はどういう方向に向かうべきか、思いを語っていただきました。

次の100年に向けた将来のビジョンは

次の100年に向けて

創業100周年という節目に、この会社にいられる事、また皆さんと一緒にお祝いできる事は、私にとってとても貴重な経験ですし、非常に嬉しいです。マリオットホテルでの記念パーティおよびテーマパークでの大感謝祭は、心残すことなく皆さんとまた家族と一緒に楽しみたいと思っています。
しかし、100年は通り過ぎてしまえば、ただの通過点でしかありません。ゴムノイナキが、次の100年に向けてどうやって「継続」し「生き残っていく」か、その為には何をめざして、またどんなビジョンを描いていくべきなのか。
今の時代、周りの環境の変化が激しすぎて、先読みすることは難しいですが、私が思う「目指していくべき」であろう代表的な3つ軸をあげさせてもらおうと思います。

目指すべき3つの軸

中国 武漢に設立した「華奈克(ファーナック)」では中国国内向けの生産工場を立ち上げている最中だ。

現在のゴムノイナキの取り扱い製品の75%以上は自動車部品です。その自動車業界では100年に一度のパラダイムシフトが起き、「CASE」や「MaaS」※注1)などの大きな変化が今まさに起きようとしています。これによりゴムノイナキが販売できる商品も、大きく様変わりする可能性があり、何が無くなり生まれてくるのか、また何に上手く経営資源を注入していくべきかが重要なポイントになります。
更に「TNGA」※注2)に代表される部品の共通化が進み、取るか取られるか「All or Nothing」の競争が激化しています。コストをベースとした営業力・技術力・品質力が問われ、他に勝てた者だけが受注継続できるという厳しい状況が、既に今ここにあります。

そんな環境の中、我々が目指すべき1つ目の軸は「継続するための稼ぐ力の強化」だと思います。
現在のゴムノイナキの事業部をベースとしたお客様毎に、車種・プラットホームや部品ユニットでのモデルチェンジのタイミングで、次期モデルの取りこぼしがない様、営業・技術・品質が一丸となって、お客様にサービスを提供し受注を確保する。更には、ゴムノイナキグローバルネットワークを最大限駆使し、お客様が必要とする場所で、効率良く生産を行い、タイムリーに供給をしていくことで受注を維持することだと思います。

2つ目の軸は「未来の技術革新への投資」です。
①今後、様変わりしてく部品へ価値を付与する商品開発
②もの作りでは、自動化・省人化を進め、世界で通用する価格レベルへの原価改善
③軽量化、耐熱アップ、高減衰(振動を抑える)に代表される新たな素材の開発など、これら技術革新への投資を積極的に行っていきます。

2015年にミャンマーに設立した「ミャーナック」。ゴムグローバル拠点の受け皿工場として、またホース工場が新たな販路開拓を。

3つ目は、将来の「新規事業への挑戦」の軸です。
自動車分野で、現在お取り引き頂いている商品で「稼ぐ力」を維持しつつ、
①これまでやってこなかった新規の自動車部品へチャレンジ
②お付き合いのなかったお客様への新規参入
③更には自動車以外の産業での事業展開などに挑戦していく必要があります。

裕社長がいつも言われる「今の世の中、変化がとても大きく、立ち止まっていたら滅びてしまうだろう。『五里霧中』の環境だからこそ、『暗中模索』でも失敗を怖れずに行動する。仮に失敗しても次の成功への糸口を見つけ出すことが大切」という考えです。
現在、ミャーナックではホース事業の生産開始、華奈克では中国国内向け生産工場の立ち上げ準備、更には新分野の開拓のためにM&Aにもチャレンジしているところです。

※注1)
CASE:Connectedコネクティッド・Autonomous自動運転・Shared/Serviceシェアー/サービス・Electric電動化
MaaS:Mobility as a Service
交通をクラウド化し、モビリティ(移動)をサービスとして考え、ある地点から目的地までの交通手段を、公共交通機関・マイカー・タクシー・徒歩など移動をシームレス(サービスに垣根がない事)で綱なぐ、新たな概念
※注2)
TNGA:Toyota New Global Architecture
各車両プラットホームのユニットや配置の設計が統一化され、複数車種で部品が共有化される動き

取扱製品の7割以上を占める自動車部品

  • カーエアコン・エンジンルーム
  • 自動車一般部品

これから意識していきたい、技術開発のポイント

次世代に対応した付加価値ある商品開発

1つ目のポイントは、「お客様(市場)が求める価値を付与した商品開発」です。
自動車がガソリンから完全な電気に代わると、車1台当たりの総部品点数は3万点から1万点に減ると言われています。これは、間違いなく同業者間(競合他社)での部品の取り合いになるでしょう。従って、通常にモデルチェンジしていく製品は、同業者が群がり、必然的に値段のたたき合いによる辛抱合戦になります。この場合は、原価低減を追求したもの作り改善で、何とか受注を維持しなければなりませんが、やはり次世代に対応した付加価値のある商品で利益を確保したいところです。
1つ例を挙げると、電気自動車に実際乗ってみて強く感じるのが、とにかく静かという事です。走行時は、タイヤから伝わる足回りの振動と音だけで、ガソリン車特有のエンジン音や振動は全くありません。そうなると、人は車室内の音や振動がやたら気になります。例えば、エアコンが起動しコンプレッサーが動き出すと、ガソリン車では感じなかった音や振動が、気になってしまいます。この問題に対応するのが防振・防音の技術です。これはゴムやスポンジ類の得意分野となるので、付加価値を付けた新たな性能や特性を持った商品を提案していくことが不可欠になります。

自動化・省人化によるコストダウン

2つ目は「もの作りの自動化・省人化によるコストダウン/原価改善」です。
グローバル供給が一般化された現在では、世界中が競合他社です。一方で、ゴムの生産はバリの仕上げや外観検査がほぼ100%必要なため、これを人海戦術でこなす労働集約型生産を行ってきました。例えば、海外での主なゴム工場の従業員数約800名中、500名近い人がこの工程に携わっています。そのため、この部分を東南アジアや中国の安価な労働人財を上手く使うことで、過去ゴムノイナキはグループで収益をあげられてきました。しかし、これら海外工場でも年々人件費が上がってきており、工場設立当時と比較すると2倍~4倍に高騰しています。従って、これら工程を自動化・省人化を図っていくことは急務と言って過言ではないでしょう。

しかし、単純に自動化といっても、真っ黒なゴムを画像による自動判定検査することは簡単ではなく、大手画像機メーカーに製作を依頼しても、まともに使えるものができなかった過去の失敗から、社内で技術の手の内化をし、メーカーと対等以上にものが言えるノウハウの蓄積をしてきました。当社では3年半前に当開発の専門部署を立上げ、徐々に実績を上げられるようになってきました。これまで製作した自動検査装置は全16台で、各設備で効果は異なりますが、検査人員の削減により黒字化が達成できたものや品質の安定化(流出不良の撲滅)が実現できており、益々当該設備の開発が急がれています。
また最近では、協業用ロボット(人と隣合わせで働けるロボット)の安価なものが市販されるようになってきたので、検査工程以外の各種作業の省人化を、ロボットを使って進めていきたいと思っています。

自社内に所有する特殊評価設備

  • 環境対応振動試験機
  • 加熱脱着装置
  • キャピラリーレオメーター

キーワードは「コストダウン、加工性改良、製品特性向上」

3つ目は材料の開発です。現時点の開発のキーワードは「防振・防音、軽量化、超耐熱、放熱」、改良のキーワードは「コストダウン、加工性改良、製品特性向上」などがあげられます。ゴムノイナキが得意とするゴムやエラストマーの分野で、顕在化されたお客様からのご要求を的確に対応するのはもちろんの事、今後変化していくであろう潜在要求についても営業・技術でタッグを組んで開発アイテムの掘り起こしを進めていきます。材料が無ければ、「売る」「作る」ノウハウやネットワークがあっても「もの」が成立しないからです。
尚、以上3つの「技術開発のポイント」に優先順位はなく、どれも最重要課題として取り組んでおります。

以上、これから進んでいく道のりは、決して楽なものではないですが、「進取、誠実、協調」を胸に、大きく変わるであろう環境に、社員一丸となって上手く変化を遂げて、「この会社にいて良かった!」と言える会社にしていきたいと思っています。

PROFILE

専務取締役 木村 公泰 1965年(昭和40年)生まれ。1987(昭和62年)入社。
第1事業本部 技術部・品質保証部 海外管理部 第3管理室 担当。
20代には、現在年間1億個を越える世界シェアNo.1主力製品の開発に携わる。現在は海外ゴム工場の統括を担当し、今後の変化に精力的にチャレンジをする。
仕事もプライベートも納得できるまで突き詰めるゴムノイナキ屈指の理論派でありかつ実践家でもある。

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